こんにちは。園芸基本の木、運営者の「hajime」です。
豆苗、美味しいし経済的で助かりますよね。食べた後の根っこを使って「再生栽培」を試す人も多いと思います。でも、豆苗の育て方で「繰り返し」に挑戦してみると、いろんな疑問が出てきませんか?
「いったい何回まで収穫できるの?」とか、「2回目がうまく育たない…」「3回目もいける?」なんて回数の限界が気になったり。それに、水が腐るんじゃないか、変な臭いがしてきた、豆に白いふわふわしたカビが生えたみたい…なんて衛生面も心配ですよね。
水の量はどれくらい?水換えの頻度は?置き場所はどこがいい?肥料は?など、正しい育て方も気になるところだと思います。
この記事では、そんな豆苗の再生栽培に関するアレコレを、私の経験も踏まえてスッキリ解説していきますね。
本記事の内容
- 豆苗を繰り返し収穫できる限界の回数
- 2回目が育たない理由と再生の鍵
- 腐る・カビ・臭いを防ぐ水管理のコツ
- 再生栽培した豆苗の安全性と食べ方
豆苗繰り返しの育て方の限界とその理由

豆苗の再生栽培、手軽で楽しいですけど「繰り返し」にはハッキリとした限界があるんです。
「どうせなら何度も収穫したい!」と思うところですが、まずはその現実的な回数と、なぜそれ以上が難しいのか、その生物学的な理由を見ていきましょう。
そして、再生を成功させるための「最初の第一歩」である切り方についても、しっかり解説します。
豆苗は何回まで収穫できる?

結論から言いますと、豆苗の再生栽培は、購入時の収穫を含めて「合計2回まで」が現実的なラインかと思います。つまり、スーパーなどで買ってきた豆苗を収穫した後、根を水に浸けて再生させるのは、実質「1回」が目安、ということ。
「え、3回目、4回目もいけるんじゃ?」と挑戦したくなる気持ち、すごく分かります。私も試したことがありますが、たとえ芽が出たとしても、3回目(再生2回目)は非常に細く、量も少なく、風味も落ちてしまいます。
品質や後述する衛生面のリスクを考えると、「美味しく安全に」食べるなら2回でストップし、新しいものを購入するのが賢明かと思います。
2回目が育たないのはなぜ?

「2回目(再生1回目)はそれなりに育ったけど、3回目(再生2回目)が全然育たない…」というのは、育て方が悪かったわけではなく、植物としてごく自然な現象なんです。
主な理由は、大きく3つあります。
1. 豆の栄養(養分)の枯渇
豆苗が再生するときに使っているエネルギーは、水や空気からだけではなく、あの根元についている豆(種子)自体に蓄えられた養分に依存しています。
購入時(1回目)の立派な豆苗は、この豆の栄養をたっぷり使って育っています。そして、2回目(再生1回目)の収穫でも、残った養分をさらに使います。
そのため、3回目(再生2回目)の成長を促そうとしても、豆にはもう新しい芽を育てるだけのエネルギー(養分)が残っていないんです。これが、成長が著しく悪くなる最大の理由です。
2. 脇芽(わきめ)の減少・消失
豆苗は、豆の少し上、茎の根元あたりについている「脇芽(わきめ)」と呼ばれる成長点から新しい芽が伸びてきます。
1回目の収穫で、この脇芽をうまく残すことができれば、そこから2回目の芽が伸びてきます。しかし、2回目の収穫をする時点で、次に成長するための新しい脇芽がもう残っていないか、非常に小さくなっていることがほとんど。
物理的に、新しい芽が出る「起点」がなくなってしまうため、3回目の再生は困難になるわけですね。
3. 衛生面(カビ・腐敗)のリスク増大
これは見落としがちなポイントですが、栽培期間が長引けば長引くほど、水が腐ったり、雑菌が繁殖したり、豆にカビが生えたりするリスクが急激に高まります。
特に家庭の室内、しかも常温の水に浸けておくわけですから、雑菌にとっては好都合な環境です。2回目の収穫(再生1回目)で約7日〜10日かかるとすると、3回目を目指すにはさらに長い期間が必要になり、それだけ衛生状態を保つのが難しくなります。
2回目の成長が遅い・弱いのは正常です
「2回目(再生1回目)の育ちが、買った時より遅いし細いな…」と感じても、それは失敗ではありません。上記のとおり、養分や脇芽が減っている中での成長なので、当然の結果なんです。
1回目(購入時)より茎が細くなったり、風味が少し落ちたりするのは普通のことなので、心配しなくて大丈夫です。
再生栽培の鍵「脇芽」の切り方

2回目の収穫(再生1回目)を成功させるために、最も重要なのが1回目の「切り方」。ここで全てが決まると言っても過言ではありません。
ポイントは、さっき出てきた「脇芽(わきめ)」をしっかり残すこと。脇芽は、豆のすぐ上、茎の根元あたりについている小さな芽のことです。よく見ると、上下に2つほどついているのが分かると思います。
脇芽を残すカット位置
再生栽培を成功させるには、この脇芽(特に上側にある一つ目の脇芽)を残すことが重要です。
- 豆のすぐ上にある脇芽(小さな芽)の位置を、目でしっかり確認します。
- その脇芽を切り落とさないよう、脇芽の「上」でカットします。
- 包丁でもキッチンバサミでもOKですが、脇芽を潰したり、引きちぎったりしないよう、清潔な刃物でスパッと切るのがコツです。
(参照元:再生栽培のコツ|育々研究室 – 豆苗研究会 – 村上農園)
ここを間違えて脇芽ごと根元からバッサリ切ってしまうと、新しい芽が出てくる「成長点」自体がなくなってしまうので、再生栽培はほぼ失敗してしまいます。
豆ギリギリではなく、少し余裕をもってカットするのが簡単なコツですね。
肥料は必要?

「育ちが悪いなら肥料(液肥)をあげたらもっと育つのでは?」と思うかもしれませんが、豆苗の再生栽培に肥料は一切不要です。
理由は、これまでお話しした通り、豆苗は土から栄養を吸収するのではなく、豆の栄養だけで育つから。水はあくまで、その成長をサポートする(水分を供給する)役割なんですね。
肥料が逆効果になる理由
水にハイポネックスなどの液体肥料を混ぜても、収穫量にはほぼ影響しないと言われています。
それどころか、水の中の栄養が過剰になる(富栄養化)ことで、藻(アオコ)が発生しやすくなったり、雑菌が繁殖しやすくなったりと、かえって衛生状態を悪化させ、腐敗の原因となる可能性が高いです。
水だけで、シンプルに育てるのが一番安全で確実ですよ。
豆苗育て方の「繰り返し」成功術

2回目の収穫(再生1回目)を無事に成功させるための、具体的な管理方法を紹介していきます。ここで失敗しやすい「腐る」「カビ」「臭い」といったトラブルを防ぐ、水管理や置き場所のコツを詳しく見ていきましょう。
水換えの頻度

再生栽培で一番多い失敗が「腐敗」や「カビ」、そして「異臭」だと思います。これを防ぐには、とにかく水の管理が命。清潔な状態をいかに保つかが勝負ですね。
水の量:豆を浸けないのが鉄則
まずは水の量。これが一番の間違いやすいポイントです。
容器に入れる水は、根やスポンジが「軽く浸かる」程度の浅い量にしてください。根が乾燥しなければOK。
【最重要禁止事項】豆(種子)の部分を水に浸けてはいけません。
豆が常に水に浸かった状態(いわば溺れている状態)になると、呼吸ができず、そこから一気に腐敗が始まってしまいます。これが、ぬめりや異臭、カビの最大の原因になります。
タッパーなどの深い容器よりも、豆苗のパックがちょうど入るくらいの浅いお皿やバットを使うと、水の量を管理しやすいのでオススメです。
水の交換頻度:毎日の全交換
水換えの頻度は、最低でも「1日1回」は必須です。
特に夏場など室温が25℃を超えるような時期は、水が傷みやすい(雑菌が繁殖しやすい)ので、可能であれば「1日2回(朝・晩)」交換するのがおすすめ。
このとき、減った分の水を「つぎ足す」のは絶対にNG。つぎ足しを続けると、雑菌や水道水の微量成分が濃縮してしまい、衛生状態が悪化します。
必ず一度、古い水を全部捨ててから、新しい水に入れ替える(全交換)ようにしてください。
水を交換するついでに、容器がヌメヌメしていたら、それも食器用洗剤などでキレイに洗い流しましょう。このひと手間が、腐敗を防ぐ大きなポイントです。
こうした水だけで育てる方法は、豆苗以外の野菜でも応用できます。
基本的な水耕栽培(リボベジ)のコツについては、ペットボトルを使った小松菜の育て方の記事でも、小松菜を例に紹介しているので、よかったら参考にしてみてください。

臭い時の対処法

「なんか豆苗が臭い…」と感じた時、その「臭い」の種類によって対処法が異なります。
1. 腐敗臭・カビ臭がする場合
もし、水や豆が腐ったような酸っぱい臭い、ドブのような臭い、あるいは明らかにカビ臭い場合は、残念ながら食べるのはやめて破棄してください。
豆に「白いふわふわ」したものが出ることがありますが、これがカビかどうかを見極める必要があります。
カビや腐敗を見つけたら絶対に食べない
カビは、目に見えている部分だけでなく、目に見えない菌糸が豆苗全体に行き渡っている可能性があります。加熱しても毒素が消えないカビもあると言われています。
「カビた部分だけ取り除いて食べる」という行為は非常に危険。健康を害するリスクを冒すより、安全を最優先してくださいね。
【見分け方】「根毛(こんもう)」と「カビ」の違い
豆苗の根元に生える「白いふわふわ」は、カビではなく「根毛(こんもう)」という植物の正常な組織の一部であることが多いです。
これは、かいわれ大根などでも見られる現象で、植物が水分をより効率的に吸収しようとして、根から張り巡らせる細かな綿状の根です。
| 根毛(安全) | カビ(危険) | |
|---|---|---|
| 生える場所 | スポンジの下や根の部分に均一に生える | スポンジの上や豆の部分、腐った箇所に局所的に生える |
| 臭い | ほぼ無臭(植物の臭い) | 腐敗臭やカビ臭、酸っぱい臭いを伴う |
| 状態 | 根にしっかり付着している | ぬめりを伴ったり、パッチ状(まだら)に広がったりする |
明らかに「豆」の部分にカビが生えていたり、腐敗臭がしたりする場合は危険信号です。
2. 再生栽培特有の「青臭さ」が気になる場合
腐敗ではなく、再生栽培した豆苗特有の「青臭さ」が、買った時よりも強く感じられる場合もあります。これは生育環境によるものなので、調理法でカバーできますよ。
おすすめは、ごま油を使って炒めること。ごま油の香ばしい風味が、豆苗の青臭さをぐっと和らげてくれるので、とても食べやすくなります。
最適な置き場所

置き場所も、育ち方や衛生面に結構影響します。ただ水に浸けておけば良い、というわけでもないんですね。
ベストな置き場所は「日当たりの良い室内」
結論から言うと、豆苗の再生栽培にベストな置き場所は「日当たりのいい室内」。具体的には、レースのカーテン越しの窓際などが理想的です。
光合成をすることで、葉が濃い緑色になり、しっかりとした茎に育ちます。
置き場所による育ち方の違い(目安)
ある検証によると、置き場所によって育ち方にこんな違いが出たそうです。
| 置き場所 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| A:日の当たる屋外 | 収穫量は最も多い | 天候に左右される、茎が早く固くなる、虫がつく |
| B:日当たりの良い室内 | 葉が大きく緑も濃い、バランス最強 | 特になし(夏場の直射日光は注意) |
| C:暗い室内(窓なし) | (特になし) | 茎がひょろ長く育つ(徒長)、葉が小さく緑も薄い |
総合的に見ても、やはり「日当たりの良い室内(B)」がベストな選択と言えそうです。屋外(A)は虫がつくリスクがあるので、キッチンで育てる野菜としては避けたいですね。暗い場所(C)だと、いわゆる「もやし」のような育ち方になってしまいます。
季節ごとの管理(夏・冬)
豆苗(エンドウ)の生育に適した温度は、だいたい12℃〜20℃くらいとされています。なので、暑すぎても寒すぎても、うまく育ちません。
夏場の管理
夏は再生栽培の難易度が最も上がります。
直射日光は絶対に避けてください。窓際に置いていると、容器内の水温が上昇しすぎて、豆が一気に腐敗します。藻やカビも発生しやすくなります。
夏場は、直射日光が当たらない、風通しの良い「明るい室内」で育て、水換えを1日2回(朝・晩)に増やして対応しましょう。
冬場の管理
逆に冬場は、寒すぎると成長が著しく遅くなったり、枯れたりする可能性があります。特に窓際は夜間に冷え込みます。
冬場は、日中は窓際で日光に当て、夜間は部屋の中央など、暖房の効いた暖かい場所に移してあげるのが良いですね。
生食できる?

これは、豆苗の再生栽培を安全に楽しむ上で、非常に重要なポイントです。
スーパーなどで販売されている豆苗(1回目)は、衛生管理が徹底されたクリーンな工場で生産されています。しかし、家庭で再生栽培した豆苗は、室温の水道水に浸かって育ちます。
どれだけ気をつけて水換えをしても、空気中の雑菌などが繁殖しやすい環境であることに変わりはありません。
安全のために「加熱調理」を強く推奨します
こうした衛生面のリスクを考慮して、2回目以降に収穫した豆苗は、生食(サラダなど)を避け、必ず加熱調理して食べるようにしてください。
炒め物、スープ、おひたし、電子レンジでの加熱など、しっかり火を通せば安心して食べられます。これらの情報は一般的な目安であり、食中毒などのリスクを完全に排除するものではありません。最終的なご判断はご自身で行い、安全に十分配慮してください。
収穫のタイミングと食べ方
再生栽培した豆苗は、茎の高さが20cm〜30cm程度になったら収穫の目安。
収穫を遅らせすぎると、茎が固くなり、筋っぽくなって食感が悪くなります。「ちょっと早いかな?」くらいで収穫するのが美味しいコツかもしれません。
もし収穫が遅れて茎が固くなってしまった場合は、生食や和え物には向きません。前述の「青臭さ」対策と同様に、炒め物やスープなど、しっかり加熱することで茎が柔らかくなり、食べやすくなりますよ。
土で育てる方法

水耕栽培での「繰り返し」は2回が限界ですが、その豆苗を「土に植える」という、その先の楽しみ方もあります。
豆苗はもともと「エンドウ豆」の若芽。なので、土に植えて育て続けると、植物本来の姿に戻り、ツルを伸ばし、花を咲かせ、最終的に「さやえんどう」が収穫できる可能性があるんです。
土植えの手順
再生栽培を1〜2回終えた豆苗や、収穫が遅れて固くなった豆苗は、土に植え替えることができます。
土植えの手順(ざっくり)
- 再生栽培を終えた豆苗を、根(スポンジ)ごと、3cm幅程度にカッターなどで切り分けます。(スポンジは外さなくてもOK)
- プランターや植木鉢、または花壇に、市販の「野菜用培養土」を入れ、根ごと植え付けます。
- ツルが伸びてくるので、早めに支柱(150cm〜180cm推奨)を立て、ツル野菜用のネットを設置します。
- ツルが伸びてきたら、ネットにはわせるように軽く誘引してあげます。
- 適切に管理すると、春か秋に花が咲き、その後さやができます。
もしプランターでの野菜作りに本格的に興味が出てきたら、「【10月11月に植える野菜20選!】初心者向け元気に育てる栽培ガイド」の記事なども参考に、他の野菜と一緒に育ててみるのも楽しいかもしれませんね。
土植えのコツと注意点
土植えにする場合、いくつか注意点があります。
- 最適な季節 植え付けは、気候が穏やかな「春」か「秋」が適しています。
- 収穫時期 春に植え始めた場合は初夏に、秋に植え始めた場合は冬を越し、翌年の春に収穫できることが多いです。
- 連作障害 これが一番の注意点。エンドウ豆はマメ科の植物であり、「連作(れんさく)」を極端に嫌います。 地植え(畑や花壇)の場合、以前にマメ科の植物(インゲン、ソラマメ、エダマメなど)を育てた場所では、病気や生育不良を防ぐため、3〜5年以上あける必要があります。
プランター栽培なら、毎回新しい土を使えばこの心配はありません。 (連作障害については、「【9月に植える野菜で簡単なのはどれ?】」の記事内でも少し触れています)
豆苗繰り返しの育て方の総まとめ
最後に、「豆苗育て方 繰り返し」のポイントを、もう一度しっかりまとめておきます。
豆苗再生栽培 成功のための7ヶ条
- 限界は「合計2回まで」 収穫は購入時を含め「合計2回まで」が現実的。養分の枯渇と脇芽の消失により、それ以上は成長が著しく困難に。
- 成功の鍵は「脇芽」 1回目の収穫時に、根元の「脇芽(成長点)」を必ず確認し、それを残してカットする。
- 水管理①「豆を浸けない」 水は「根だけが浸かる」浅い量にし、「豆を水に浸けない」ことが腐敗防止の最大の鍵。
- 水管理②「全量交換」 水は「1日1~2回」、つぎ足しではなく「全量交換」を徹底。容器のぬめりも洗いましょう。
- 環境は「日当たりの良い室内」 置き場所は「日当たりの良い室内」がベスト。夏場の直射日光は水温上昇と腐敗の原因となるため避ける。
- 肥料は「不要」 肥料は収穫量に影響せず、むしろ水質悪化の原因になるため不要。
- 安全な「加熱調理」 再生栽培した豆苗は、雑菌のリスクを考慮し、生食を避け必ず加熱調理して食べること。
これらのルールを守ることで、豆苗の再生栽培を安全かつ最大限に楽しむことができるかと思います。
数百円で2度美味しく、育つ過程も観察できるのは、とても経済的で教育的。ぜひ、正しい知識で再生栽培に挑戦してみてください。