冬のガーデニングを彩る寄せ植えには、空間を華やかに演出する大きな魅力があります。中でもシクラメンは、その豊富な色と長い開花時期から、主役にふさわしい植物と言えます。
この記事では、シクラメンの寄せ植えに初めて挑戦する方でも失敗しない、基本の作り方から丁寧に解説。人気の品種&カラーの選び方、全体の配置・印象を決めるコツを押さえれば、誰でもプロのような仕上がりを目指せます。
さらに、完成した寄せ植えの美しさを長く保つための管理方法、特に重要な育て方&寒さ対策から、ワンランク上の見せ方を実現する寄せ植えを魅せるテクニックまで、幅広くご紹介します。
本記事の内容
- シクラメンの寄せ植えの基本的な作り方とコツ
- 相性の良い植物選びとセンス良く見せるデザインのポイント
- 日々の管理方法と季節ごとの注意点
- 長く楽しむための夏越しや植え替えの秘訣
初心者向け!シクラメンの寄せ植えの基本

寄せ植えの魅力と季節ごとの楽しみ方

寄せ植えの最大の魅力は、一つの鉢の中に自分だけの小さな庭、つまり箱庭の世界を創造できること。異なる色や形、草丈、性質を持つ植物を組み合わせることで、単体の鉢植えでは表現できない立体感や奥行きが生まれます。
植物が少なくなりがちな冬の時期でも、玄関先やベランダを生命力あふれる空間へと変えることが可能です。また、季節のイベントに合わせてテーマを設定できるのも、寄せ植えならではの楽しみ方と言えるでしょう。
例えば、秋にはオレンジやブラウン系の植物で落ち着いた収穫祭の雰囲気を演出し、冬が近づけばクリスマスやお正月を意識した華やかな飾り付けで、訪れる人々をお迎えできます。季節の移ろいとともに植物の表情も刻々と変化していくため、長期間にわたってその成長や変化を観察できるのも大きな喜び。
このように、自身の創造性を存分に発揮しながら、季節感あふれる空間を手軽に作れる点が、多くの人々を惹きつけてやみません。
シクラメンが寄せ植えの主役にふさわしい理由

シクラメンが冬の寄せ植えの主役として絶大な人気を誇るのには、明確な理由がいくつかあります。まず挙げられるのが、その驚くほど長い開花期間。
品種や環境にもよりますが、秋から翌年の春先まで、次々と花を咲かせ続けるため、長期間にわたって寄せ植えの華やかさを維持してくれます。花が少なくなる寒い季節に、これほど長く彩りを添えてくれる植物は大変貴重な存在。
次に、品種改良によって生まれた「ガーデンシクラメン」の存在が欠かせません。従来のシクラメンは寒さに弱く、主に室内での鑑賞用とされていました。しかし、ガーデンシクラメンは屋外の寒さにも耐えられるように作られており、冬の屋外ガーデニングで安心して使えるようになったのです。
さらに、花の色や形のバリエーションが非常に豊富な点も大きな魅力。定番の赤、ピンク、白はもちろん、上品な紫や複数の色が混じり合った複色の品種も。
花びらの形も、縁が波打つフリル咲きや、ベルのように下を向いて咲く可憐なもの、花びらが反り返って咲くユニークな形のものまで多種多様。
これにより、作りたい寄せ植えのテーマや雰囲気に合わせて、最適な一株を選ぶ楽しみが広がります。これらの理由から、シクラメンは冬の寄せ植えにおいて、まさに中心的な役割を担うのにふさわしい植物なのです。
植える時期と基本の作り方・鉢選び

シクラメンの寄せ植えを成功させるためには、適切な時期に正しい手順で植え付けることが何よりも大切。ここでは、準備物から具体的な手順、鉢選びのポイントまでを詳しく解説します。
植えるのに最適な時期
シクラメンの寄せ植えに最も適した時期は、本格的な冬の寒さが到来する前の10月から11月頃。この時期に植え付けを済ませておくことで、土の中で根がしっかりと張り、植物が新しい環境に馴染むための十分な時間が確保できます。
これにより、厳しい寒さにも耐えられる丈夫な株に育ちます。遅くとも12月上旬までには作業を終えるのが理想的です。
準備するもの
寄せ植えを始める前に、以下のものを準備しておくとスムーズに作業が進みます。
| 道具・材料 | 備考 |
|---|---|
| 鉢(プランター) | デザインやサイズを寄せ植えのイメージに合わせて選ぶ |
| 鉢底ネット | 鉢の底穴からの土の流出を防ぐ |
| 鉢底石 | 鉢内の水はけを良くし、根腐れを防ぐ軽石など |
| 培養土 | 市販の草花用の培養土が手軽でおすすめ |
| 寄せ植えにする植物 | シクラメンと相性の良い植物を数種類 |
| 移植ゴテ | 土を入れたり、苗を植えたりする際に使用 |
基本の作り方
- 鉢の準備: 鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、その上に鉢底石を2~3cmほどの厚さで入れます。この一手間が、鉢全体の水はけを格段に良くし、根腐れのリスクを大幅に減らします。
- 土を入れる: 鉢の3分の1から半分程度の高さまで培養土を入れます。
- 配置決め: 植える植物をポットに入れたまま鉢の中に仮置きし、全体のバランスを見ながら配置を最終決定します。鉢を回しながら、どの角度から見ても美しく見えるかを確認するのがポイント。
- 植え付け: ポットから苗を優しく取り出し、根鉢を固く締め付けすぎずに植えていきます。このとき、シクラメンは球根の肩(上部)が少し土の上に出るように「浅植え」にするのが最大のポイント。深く植えすぎると球根が蒸れて腐る原因となります。
- 土の追加: 苗と苗の隙間に、移植ゴテを使って丁寧に土を追加します。細い棒などで軽く突きながら、根の周りに隙間ができないように土をいきわたらせます。
- 水やり: 最後に、鉢の底から水が十分に流れ出るまでたっぷりと水を与えます。これにより、根と土がしっかりと密着し、根付きが促進されます。
鉢選びのコツ
鉢は寄せ植え全体の印象を大きく左右する重要な要素。素焼きのテラコッタ製はナチュラルで温かみのある雰囲気に、釉薬のかかった陶器製はシックでモダンな印象を与えます。
植物の大きさに対して鉢が小さすぎると根詰まりを起こし、生育不良の原因になるため、将来の成長を見越してある程度の余裕を持ったサイズを選びましょう。
人気の品種&カラーで作るおしゃれな配置デザイン

シクラメンの寄せ植えをおしゃれに仕上げるには、品種選びと色の組み合わせが鍵となります。ここでは、人気の品種と、それらを活かしたカラーデザインの考え方をご紹介します。
人気のガーデンシクラメン品種
ガーデンシクラメンには、それぞれ個性的な魅力を持つ品種がたくさんあります。
- メティス: 最もポピュラーな系統で、花色が豊富に揃います。丈夫で育てやすく、初心者の方にも安心。
- ファンタジア: 花びらの縁に白い覆輪が入るのが特徴で、一株だけでも非常に華やかな印象を与えます。寒さにも特に強い系統として知られています。
- ジックス: 花びらが傘のように反り返って咲く、ユニークな花姿が人気を集めています。
- ショコラ: 深いワインレッドの花色が美しい品種。気温が下がると、よりチョコレートのような深みのある色合いに変化し、シックな寄せ植えにぴったりです。
- イリュージア: 上向きに咲く花が特徴で、従来のシクラメンのイメージを覆す新しいタイプの品種です。
カラーを活かしたデザイン
色の組み合わせ次第で、寄せ植えの雰囲気は大きく変わります。
- 同系色でまとめる(グラデーション): ピンクの濃淡や、赤からワインレッドへのグラデーションでまとめると、統一感のある上品な仕上がりになります。色選びに迷った際に試しやすい、失敗の少ない組み合わせです。
- 反対色をアクセントに(コントラスト): 例えば、紫色のシクラメンに鮮やかな黄色のビオラを合わせるなど、色相環で反対に位置する補色の関係にある色を組み合わせると、お互いの色が引き立ち、生き生きとしたエネルギッシュな印象になります。
- 白やシルバーを繋ぎ役に: 赤やピンクなどの鮮やかな色の間に、白いアリッサムやシルバーリーフの植物(シロタエギクなど)を配置すると、強い色の印象が和らぎ、全体のトーンがまとまります。ナチュラルで洗練された雰囲気を作り出すのに効果的です。
これらの品種やカラーデザインの考え方を参考に、自分だけのオリジナルな寄せ植えをデザインしてみてください。
全体の配置・印象を決めるコツ

寄せ植えの美しさは、個々の植物の魅力だけでなく、全体の配置バランスによって大きく左右されます。ここでは、全体の印象を格上げするための配置のコツを解説します。
立体感を意識した配置
寄せ植えに自然な奥行きと立体感を出すためには、植物の高低差を巧みに活かすことが基本。これは、自然の風景を小さな鉢の中に再現するイメージです。
- 背の高い植物を奥に(Thrillers): 一般的には、最も背の高くなる植物を鉢の後方または中央に配置します。これが全体の骨格となり、視線を引きつけるポイントになります。
- 中間の高さの植物を中間に(Fillers): 主役となるシクラメンなど、中くらいの高さの植物をその周りに配置し、全体のボリュームを出します。
- 背の低い植物を手前に(Spillers): アリッサムなどの背の低い植物や、アイビーのように垂れ下がる性質の植物を鉢の縁に沿って植えます。これにより、鉢と植物の境界線が曖昧になり、一体感のあるより自然な風景が生まれます。
この「奥(高)→中間→手前(低)」という配置は、寄せ植えデザインの基本であり、これを意識するだけで格段に見栄えが良くなります。
株間を適切に空ける
植え付けの際、苗と苗の間を詰めすぎないように注意することが大切です。最初は少し隙間が目立ち、寂しく感じるかもしれませんが、植物はこれから生長し、葉を広げていきます。
適切な株間(10cm程度が目安)を空けることで、株元の風通しが良くなり、多湿を原因とする病害虫の発生を防ぐ効果があります。また、それぞれの植物が伸び伸びと育つためのスペースを確保することで、より美しい姿を長く保つことが可能。
植物たちが互いに光や養分を奪い合うことなく、健やかに共存できる環境を整えてあげましょう。
クリスマス・秋冬におすすめの植物と演出のアイデア

シクラメンは単体でも美しいですが、他の植物と組み合わせることでその魅力は一層引き立ちます。特にクリスマスや冬の季節感を演出するのにぴったりの植物やアイデアをご紹介します。
シクラメンと相性の良い植物
シクラメンの開花時期や好む環境(日当たり、水はけの良い土)が似ている植物を選ぶのが基本です。
- パンジー・ビオラ: 冬の寄せ植えには欠かせない存在で、カラーバリエーションが非常に豊富。シクラメンの足元を覆うように広がり、色鮮やかな絨毯のようになります。
- アリッサム: 小さな花が密集して咲き、寄せ植えの隙間を優しく埋めてくれます。甘い香りがする品種もあり、五感で楽しめます。
- ハボタン(葉牡丹): キャベツのような葉が冬の寒さで美しく色づき、彩りとして重宝されます。寄せ植えに加えると、一気にお正月らしい雰囲気も演出できます。
- シルバーリーフ(シロタエギクなど): 銀色がかった葉は、どんな色の花とも相性が良く、寄せ植え全体を明るく洗練された印象にしてくれます。まるで雪が積もったような、冬らしい景色を連想させます。
- チェッカーベリー: 冬の間、可愛らしい真っ赤な実をつけます。これを加えるだけで、クリスマスムードが格段にアップする魔法のアイテムです。
- カルーナ: 細かい葉と花の質感が特徴的で、縦のラインを強調し、寄せ植えにナチュラルな動きと彩りを加えます。
クリスマスの演出アイデア
赤いシクラメンを主役に、純白のアリッサムやイベリス、そしてシルバーリーフのシロタエギクを組み合わせれば、定番のクリスマスカラーの寄せ植えが簡単に完成します。
そこにチェッカーベリーの赤い実を宝石のように散りばめ、背景に小さなコニファーを一本加えると、まるで鉢の中にクリスマスツリーがあるかのような小さな庭が出来上がります。
仕上げにゴールドのリボンやベルの形をしたクリスマスピックを飾れば、より一層雰囲気が盛り上がります。
シクラメンの寄せ植えを長く楽しむ管理方法

水やり・肥料・季節ごとの管理方法

寄せ植えを美しく長持ちさせるためには、植え付け後の日々の管理が非常に重要。ここでは、水やり、肥料、そして季節に応じた手入れのポイントを解説します。
水やりの基本
水やりは、寄せ植え管理の基本中の基本であり、最も注意が必要な作業です。
- タイミング: 土の表面が乾いたら、たっぷりと与えるのが原則。指で土を触ってみて、湿り気を感じなければ水やりのサイン。まだ土が湿っている状態で水を与え続けると、根が呼吸できなくなり根腐れの原因になります。
- 与え方: シクラメンの水やりで最も注意すべき点は、球根や葉、花に直接水をかけないこと。水がかかると灰色かび病などの病気の原因になりかねません。
葉を少し持ち上げて、株元の土に直接、ジョウロの先が細いものを使って優しく注ぐように与えましょう。鉢底から水が流れ出るまで、寄せ植え全体にまんべんなく水が行き渡るようにします。
肥料の与え方
シクラメンは次々と花を咲かせるため、多くのエネルギーを消費します。適切に肥料を与えることで、花を長く楽しむことができます。
- 元肥: 植え付けの際に、ゆっくりと長期間効果が続く緩効性の化成肥料を土に混ぜ込んでおきます。これが基本的な栄養となります。
- 追肥: 生育期である秋から春にかけて、液体肥料を規定の濃度に薄め、10日~2週間に1回程度の頻度で水やり代わりに与えます。これにより、花付きが良くなります。
ただし、真冬の最も寒い時期は生育が緩やかになるため、肥料の頻度を少し減らす(例:3週間に1回)と良いでしょう。
季節ごとの管理
- 秋: 植え付け直後は根がまだ安定していません。1~2週間は強い直射日光を避けた明るい日陰で管理し、植物が新しい環境に慣れるのを待ちます。
- 冬: 日当たりの良い場所に置くのが基本。ただし、厳しい霜や寒風は株を傷める原因になるため、後述する寒さ対策が不可欠になります。
- 春: 暖かくなるにつれて生育が活発になりますが、同時にアブラムシなどの病害虫も活動を始めます。定期的に葉の裏などをチェックし、早期発見・早期駆除を心がけましょう。
- 初夏: 花が終わり、葉が黄色くなり始めたら、それはシクラメンが休眠期に入るサイン。夏越し(なごし)の準備を始めます。
室内・屋外の育て方&寒さ対策

寄せ植えでは主に屋外で育てられるガーデンシクラメンを使用しますが、その育て方と冬を乗り切るための寒さ対策について解説します。
屋外での育て方
ガーデンシクラメンの寄せ植えは、屋外で管理するのが基本です。
- 置き場所: 秋から春にかけては、できるだけ長時間日光が当たる、風通しの良い場所を選びます。十分な日光は花付きを良くし、風通しは病気の予防に繋がります。ただし、夏の強い直射日光は葉焼けの原因になるため避ける必要があります。
- 雨への注意: 長雨に当たると、土が常に過湿状態になり根腐れを起こしたり、繊細な花が傷んだりする原因になります。雨が何日も続くようなら、軒下など直接雨の当たらない場所に移動させると安心です。
寒さ対策のポイント
ガーデンシクラメンは耐寒性があるとはいえ、日本の厳しい冬を乗り切るためにはいくつかの対策が効果的です。
- 霜よけ: 霜が直接植物に降りると、葉や花の細胞が凍ってしまい、深刻なダメージを受けます。天気予報で霜注意報が出た日や、気温が0℃を下回りそうな夜は、軒下に移動させるのが最も簡単な対策。
移動が難しい場合は、不織布を鉢全体にふわりとかけたり、夜間だけ段ボール箱をかぶせたりするだけでも大きな効果があります。 - 寒風を避ける: 冷たく乾燥した北風に当たり続けると、植物は必要以上に水分を奪われて弱ってしまいます。風当たりの強い場所は避け、建物の壁際や生垣の近くなど、風を避けられる場所に置くと良いでしょう。
これらの対策を講じることで、シクラメンは冬の寒さを健康に乗り越え、春まで元気に花を咲かせ続けてくれます。
寄せ植えが枯れる原因と対策

大切に育てている寄せ植えのシクラメンが元気をなくしてしまうのには、いくつかの典型的な原因が考えられます。ここでは、よくある失敗例とその対策について解説します。
過湿による根腐れ・球根の腐敗
最も多い失敗例が、水のやりすぎによる根腐れです。
- 症状: 下の方の葉から黄色く変色し、株元がぐったりと柔らかくなります。
- 原因: 土が常に湿った状態が続くと、根が呼吸できなくなり腐ってしまいます。また、前述の通り、シクラメンの球根に直接水がかかり続けると、そこから腐敗が始まることがあります。
- 対策: 水やりは必ず土の表面が乾いてから行い、与える際は球根や株元を避けて土に直接注ぐことを徹底します。鉢の水はけが悪い場合は、一度鉢から抜いて鉢底石を追加したり、水はけの良い培養土に植え替えたりするのも有効です。
深植え
植え付け時の小さなミスが、後から大きな問題となって現れるケースです。
- 症状: 生育が全体的に悪く、花がなかなか咲かない、球根のあたりが腐ってくるなど。
- 原因: シクラメンの球根を土の中に完全に埋めてしまうと、通気性が悪くなり、球根が蒸れて腐りやすくなります。
- 対策: 植え付けの際には、必ず球根の上部が土の表面から少し見える程度の「浅植え」を心がけます。もし深く植えてしまったことに気づいたら、株元の土を優しく取り除き、球根の肩が見えるように調整しましょう。
霜や凍結によるダメージ
寒さ対策を怠ると、一晩で株が深刻なダメージを受けることがあります。
- 症状: 花や葉が水っぽく、ぐったりと垂れ下がります。一度凍ってしまった部分は、残念ながら元に戻りません。
- 原因: 強い霜に当たったり、土が凍結したりすると、植物の細胞が物理的に破壊されてしまいます。
- 対策: 天気予報をこまめにチェックし、気温が氷点下になりそうな夜は軒下に移動させるなど、早めの霜よけ対策を講じることが何よりも大切です。
これらの原因と対策を知っておくことで、多くの失敗は未然に防ぐことが可能です。
夏越し・長期間開花させるための管理術

シクラメンの魅力を最大限に引き出し、翌年も美しい花を楽しむためには、日々の花がら摘みと、少し上級者向けですが夏越しの管理が重要になります。
花を長く楽しむための「花がら摘み」
咲き終わった花をそのままにしておくと、植物は種を作るために養分を集中させてしまい、次の花が咲きにくくなります。
- 方法: 咲き終わってしおれた花を見つけたら、その茎の根元を指でしっかりとつまみ、くるくると軽くねじるようにしながら、真上に引き抜きます。
ハサミで途中から切ると残った茎が腐敗し、病気の原因になることがあるため、根元から綺麗に抜き取るのが基本です。 - 効果: この作業をこまめに行うことで、株の体力が温存され、そのエネルギーが新しい花芽を作る方へと向けられます。黄色くなった葉も同様に取り除きましょう。
夏越し(なごし)の方法
シクラメンは地中海沿岸が原産のため、日本の夏の高温多湿が非常に苦手で、この時期は休眠期に入ります。上手に夏越しさせることで、秋に再び美しい花を咲かせることができます。
- 休眠させる方法(ドライメソッド):
- 5月頃になり花が咲かなくなり、葉が黄色くなり始めたら、水やりの回数を徐々に減らしていきます。
- 全ての葉が自然に枯れたら、水やりを完全にストップします。
- 鉢植えのまま、雨が当たらず、直射日光の当たらない風通しの良い涼しい場所(家の北側や棚下など)に移動させて、秋まで静かに保管します。
- 9月頃になったら、鉢から球根を取り出し、古い土や枯れた根を優しく取り除いて、新しい土で植え替えます。その後、水やりを再開すると、休眠から覚めて新しい芽が出てきます。
- 5月頃になり花が咲かなくなり、葉が黄色くなり始めたら、水やりの回数を徐々に減らしていきます。
この夏越しは少し手間がかかりますが、成功すれば同じ株で何年も花を楽しむことが可能です。
寄せ植えの解体・植え替え時期とコツ

春になり、シクラメン以外の植物(パンジーなど)が伸びすぎて姿が乱れたり、花期が終わったりすると、寄せ植え全体のバランスが崩れてきます。その時が、寄せ植えを解体し、それぞれの植物を新たな環境に移す適切なタイミング。
解体・植え替えの適切な時期
一般的に、寄せ植えの解体は4月下旬から5月頃に行うのが適しています。この時期には、冬から春にかけて主役だった一年草の多くが花の盛りを過ぎ、シクラメンも休眠の準備に入る頃合いです。
解体と植え替えの手順
- 植物を取り出す: 鉢から寄せ植え全体を、土ごとそっと抜き出します。根が互いに絡み合っている場合は、無理に引っ張らず、優しくほぐしながら、それぞれの植物を一つずつに分けていきます。
- シクラメンの処遇:
- 夏越しさせる場合: 前述の通り、一回り大きな鉢に新しい土で植え替えて、夏越しの管理に入ります。このとき、球根に傷や腐敗がないかよく確認しましょう。
- 一年草として扱う場合: 夏越しが難しい場合や手間をかけたくない場合は、残念ながらここで処分します。
- 夏越しさせる場合: 前述の通り、一回り大きな鉢に新しい土で植え替えて、夏越しの管理に入ります。このとき、球根に傷や腐敗がないかよく確認しましょう。
- 他の多年草・宿根草の処遇: 寄せ植えに使った他の植物で、夏を越せるもの(ヒューケラ、アイビー、ハツユキカズラなど)があれば、それぞれを単独の鉢に植え替えたり、お庭に地植えしたりして育て続けることができます。
- 土の再利用について: 一度植物を育てた土は、養分が消耗しているだけでなく、病原菌や害虫の卵が潜んでいる可能性もあります。そのため、再利用はあまりおすすめできません。
もし再利用する場合は、黒いビニール袋に入れて夏場の強い直射日光に当てて消毒をするなどの処理が必要です。
寄せ植えの解体は、それぞれの植物にとって新たなステージへのスタートとなります。最後まで丁寧に取り扱い、次のシーズンへの準備を整えましょう。
シクラメン寄せ植えを魅せるテクニックと小物

基本的な作り方や管理方法を押さえたら、次はワンランク上の寄せ植えを目指すためのテクニックと小物の活用法です。少しの工夫で、寄せ植えはさらに個性的で魅力的な作品になります。
植え方の応用テクニック
- 苗を斜めに植える: ポットから出した苗を、まっすぐ縦に植えるのではなく、少し外側に傾けて植えるテクニックがあります。
こうすることで、植物が鉢の外側に向かって自然に広がるように育ち、よりナチュラルで動きのある印象になります。特に、鉢の縁に植えるアイビーなどの垂れ下がる植物に適用すると効果的です。
印象を変える小物(マルチング)の活用
マルチングとは、鉢の土の表面を何らかの資材で覆うこと。これにより、見た目がおしゃれになるだけでなく、土の乾燥防止、温度変化の緩和、雨による泥はね防止など、多くの実用的なメリットも期待できます。
- 水苔やバークチップ: 土の表面を水苔や木の皮であるバークチップで覆うと、ナチュラルで落ち着いた雰囲気になり、保湿効果も高まります。
- くるカラ(くるみの殻): 洋風の可愛らしい印象を与え、軽くて扱いやすいのが特徴。
- 化粧砂: 白や色のついた砂利を薄く敷くと、モダンでクリーンな印象に仕上がります。
季節感を高める装飾
寄せ植えが完成したら、季節のイベントに合わせた小物をプラスして、遊び心を加えてみましょう。
- クリスマス: 小さなリボン、金色に塗装した松ぼっくり、サンタクロースのクリスマスピックなどを飾る。
- お正月: 和風のピックや小さな水引、赤い実の飾りなどを添える。
これらの小物は、シーズンが終われば簡単に取り外せるので、手軽に季節の移ろいを表現できます。ちょっとした工夫で、道行く人の目も楽しませる素敵な寄せ植えが完成します。
素敵なシクラメンの寄せ植えを楽しもう
この記事では、シクラメンの寄せ植えを美しく作り、長く楽しむためのポイントを網羅的に解説してきました。基本を押さえ、少しの工夫を加えれば、誰でも素敵な作品を作ることができます。最後に、重要な点を箇条書きでまとめますので、ぜひ参考にしてください。
- 寄せ植えは一つの鉢で小さな庭を作れるのが魅力である
- シクラメンは開花期間が長く冬の寄せ植えの主役に最適の植物である
- 植え付けは本格的な寒さが来る前の10月~11月がベスト
- 鉢底ネットと鉢底石で水はけを良くするのが基本となる
- シクラメンの球根は土に埋めすぎず浅植えにするのが最重要だ
- 背の高い植物を奥に、低いものを手前に配置して立体感を出すのがポイント
- 赤いシクラメンに白やシルバーの植物を合わせるとクリスマスらしくなる
- 相性の良い植物はパンジー、アリッサム、ハボタンなど
- 水やりは土が乾いてから、球根を避けて土に直接与える
- 秋から春の生育期には液体肥料を定期的に与えること
- 霜よけ対策として、寒い夜は軒下への移動が効果的である
- 枯れる主な原因は水のやりすぎによる根腐れである
- 咲き終わった花は茎をねじりながら引き抜く
- 夏は水やりを控え、涼しい日陰で休眠させて夏越しさせる
- 春にバランスが崩れたら解体し、個別に植え替える

